二十四節気  立秋(りっしゅう)|歳時記

ゆく夏を惜しむ、五山のともしび

昼間は、照り返す陽射しに息をのむような暑さが続いています。

「秋」という言葉には程遠い暑さですが、ふと見上げる空に高いうろこ雲がくっきり浮かび、

朝夕の風に、ほんの少しだけ涼しさを感じます。

うだるような暑さを和らげるため、部屋にはすだれや風鈴、涼しげなガラスの花器を置き、

桔梗の凛とした青や女郎花の黄色い花を生けるのは、まさに『先人の知恵』。

みずみずしい果物をお供えすると、部屋の空気はピンと張りつめ、お精霊(しょらい)さんを迎える神聖な空間へと変わっていきます。



京都のお盆(8月13日〜16日)では、ご先祖様をお迎えし、もてなすために、精進料理のお膳の献立を毎日変えてお供えする伝統が深く根付いています。

昼間は猛暑が続くものの、夜になると立秋らしい微かな涼しい風が時折吹き始めます。

そしてゆく夏を惜しむ頃、五山の送り火が京の夜空に浮かびあがります。

闇に浮かび上がる真っ赤な炎を見つめながら、大切なご先祖様の霊、お精霊(しょらい)さんが
迷わず還れるようにと静かに手を合わせるのです。

闇に揺らめく炎は、熱く火照った夏を燃やし尽くし、季節の幕を引く儀式でもあります。

翌朝、役目を終えた団扇を仕舞い、部屋の手ぬぐいを秋の柄へと掛け替えます。

ふと気が付くと、あんなに賑やかだった蝉の声がツクツクボウシへの変わり始めていることに気がつきます。

耳を澄ますと虫の音がいつの間にか大きくなっていることにも気づき、「本格的な秋」の到来を感じます。

送り火が夜空を照らし終えると、お盆という一つの区切りが終わり、京都の人々は

「これで本当に夏が過ぎ、秋がやってくる」と肌で感じるのです。

炎はやがて闇に溶け、京都の夜は、静かな秋へと歩み始めます。

小さな暮らしの案内人