ベランダに届いた、天からの贈り物
私の小さなベランダガーデンでは、秋の気配が近づく今頃の時期になると、不思議なことが起こる。
植えた覚えのない見知らぬ緑の芽が、あるはずのない場所から顔を出すのだ。
風が運んできたのか、鳥が落としていったのか。
それは時に、「ええっ」と思わず声を上げてしまうような、天からの粋な贈り物だったりする。
最初は、ただの雑草なのか、それとも美しい花を咲かせる苗なのか、判別がつかない。
じっと観察しながら、その正体が分かるまでの時間は、どこか宝探しの答え合わせを待つようで愛おしい。
そして今年、少しずつ大きくなる葉の切れ込みを見て、確信に変わった。
「今回は、ローゼルだ」
いや、正確には、よくお店で見かける「お茶用のローゼル」とは少し違う。
あのおなじみのハイビスカスティーになるローゼルは、成長すると爽やかな緑の葉を茂らせ、クリーム色の花を咲かせる。
一方、我が家のベランダに現れたのは、茎も葉も最初から深い赤紫色に染まった「クランベリーハイビスカス(赤葉ローゼル)」という品種だ。

お茶用のものほど実は大きく肉厚にはならないけれど、その代わり、咲かせる花までシックな赤色一色に染まる。
かつて我が家には、冬の間はお部屋に入れて、家族のように大切に育てた親木がいた。
ぬくもりのある室内で、私の背丈をはるかに超える二メートルにまで見事に育ち、あんなに赤かった葉が、まるで安心したかのように瑞々しい緑色に変わるのだ。
その中に情熱的な赤い花がいくつも顔を出し、冬の我が家が南国になったような感じがしたものだ。
熱帯育ちの彼らにとって、日本の冬は過酷なはずなのに、部屋の中で懸命に咲き誇る姿は本当に愛おしかった。
しかし、そんな彼らも、やがてその天寿を全うし、枯れてしまった。
あの時の寂しさは、今でも心に残っている。
本来この木はアフリカ生まれの多年草なのだが、日本の寒さに耐えられず、日本では一年草になるらしい。
けれど、命は途絶えていなかったのだ。
あの親木が、人知れずベランダの片隅に小さなこぼれ種を託していたのだろう。
寒さを耐え抜き、今、再び立ち上がったその姿は、あの頃と同じ美しいブロンズ色に輝いている。
お茶用のローゼルではないけれど、この赤い葉や花だって、お湯を注げば綺麗なルビー色のお茶になって私を癒やしてくれる。
ベランダという小さな宇宙で繰り返される命の循環と、あの冬の思い出が繋がったことに、私は今、静かな感動を覚えている。

小さな暮らしの案内人
