二十四節気 芒種(ぼうしゅ)|歳時記

 梅の一滴(ひとしずく)

窓の外では、しとしとと静かな雨が降っています。

水を湛えた田んぼを優しく濡らす雨粒を見つめながら、ああ今年も芒種(ぼうしゅ)の季節がやってきたと感じます。

芒種と共に京都も梅雨入りし、雨の一滴一滴が季節を本格的な夏へと進めていきます。

蒸し暑さと湿気が増すこの時期は、食欲をそそる旬の薬味を使った献立が食卓を飾ります。


そんな雨の午後、我が家の台所は、買ってきたばかりの梅の甘い香りで満たされています。

今年も梅を使った手仕事の季節がやってきたのです。

芒種の雨が降る今日、私は静かに梅を洗い、
へそを取り、水滴をとった梅を、ガラス瓶に重ねていきます。

そこに上からトポトポと蜂蜜入りのらっきょう酢を注ぐ。

透明なお酢のなかで、ツヤツヤとした梅の肌がきらきらと光っています。

太陽の季節にはまだしばらく時間が必要だけど、
この梅干しの作り方なら部屋の静けさのなかで、

じっくりと時間をかけて熟成させていくことができるのです。

外では雨の一滴一滴が季節を夏へと進めています。

そしてこの瓶の中でも、季節の移ろいと共にゆっくりと時間が動き出します。

数日経つと、梅の表面からじわりと「一滴」のエキスが染み出し、お酢のなかに溶けていきます。

尖っていたお酢の酸味が、梅の力でまろやかさに変わっていくのは不思議ですね。


数ヶ月後、この琥珀色の一滴(漬け汁)を炭酸で割って飲む日が、そして甘酸っぱくふっくら、
とろりとした梅をかじる夏の日が楽しみです。

「雨の季節を閉じ込めた瓶」を愛おしく揺らしながら、おだやかな芒種の日が暮れていきます。

小さな暮らしの案内人