8月 猛暑にひらく、涼の香(か)

猛暑にひらく、涼の香(か)

まだ朝だというのに、ベランダには容赦ない熱気が満ちている。

厳しい猛暑に少し気が重くなりながらベランダに出ると、涼しげな淡い紫の色彩が目に飛び込んできた。

こんな猛暑に鉢植えのラベンダー・デンタータが、花を咲かせている。

我が家で暮らし始めて、もう二十年以上になる。

四季咲きと言われているが、彼女は季節ではなく、その時々の「気候」を肌で感じて生きているようだ。

だから春や秋だけでなく、凍えるような冬でも、こんな猛暑が続く日でも、ほんのかすかな季節の移ろいを感じて花を咲かせている。

ギザギザの葉にそっと触れてみると、指先からツンと鼻に抜ける清涼な香りが立ち上った。

人間が暑さに怯えて部屋に閉じこもる中、彼女は太陽の光をそのまま受け入れ、自ら涼しい風を紡ぎ出している。

その健気な姿を見ていると、強張っていた心の力が、すっと抜けていくのが分かる。

あらためて植物の持つエネルギーとパワーに驚かされる。

二十二回目の夏。

変わらないあの香りに包まれながら、私は深く息を吸い込み、彼女がくれた小さな紫の風を、
胸いっぱいに満たした。

今日もまた、暑い一日が始まる。


小さな暮らしの案内人