9月 雨上がりの忘れ物

雨上がりの忘れもの

激しい雨上がりの朝、何気なくお庭の隅に目をやった。

昨日まで何もなかった場所に、真っ白な花が咲いているのを見つけた。

草陰でじっと恵みの雨を待っていた健気な白さに、雨上がりの庭でしばらく見惚れてしまった。

他の植物の隙間を縫うようにして、見たことのない真っ白な花が、ひっそりと、しかし背筋をピンと伸ばして咲いていたのだ。

植えた覚えは、もちろんない。昨日まではそこに何もなかったはずだった。

まるで雨粒が地面に落ちた拍子に、そのまま白い花へと姿を変えたかのような、不思議な錯覚さえ覚える。

「これ、何の花?」

気になって調べてみると、その花の名前は玉簾(たますだれ)。
別名「レインリリー(雨のユリ)」という異名があることを知った。

まとまった雨の水分を合図にして、土の中で眠っていた球根が一気に茎を伸ばし、数日のうちに開花するのだという。

なるほど、と胸のつかえが下りると同時に、愛おしさが込み上げてきた。

この子は誰に気付かれるでもなく、周りの大きな植物の陰でじっと息を潜め、恵みの雨が降るその瞬間を待っていたのだろうか。

風に運ばれてきた種なのか、それとも土の底で眠っていた古い球根なのか。

どちらにせよ、私の知らないお庭の歴史が、雨をきっかけにひょっこり顔を出したようだった。

野に咲く花のようなたくましさと、触れれば折れてしまいそうな儚い白さ。

今年の夏は過去にない酷暑で、いくつかの鉢植えの植物が枯れてしまい悲しかったが、出会うはずのないいくつかの野に咲く花?がわたしのところにやってきてくれた。

まさに雨が届けてくれた小さな贈り物。

草陰でじっと恵みの雨を待っていた健気な白さに、雨上がりの庭でしばらく見惚れてしまった。


小さな暮らしの案内人