雨上がりの忘れもの
激しい雨上がりの朝、何気なくお庭の隅に目をやった。
昨日まで何もなかった場所に、真っ白な花が咲いているのを見つけた。
草陰でじっと恵みの雨を待っていた健気な白さに、雨上がりの庭でしばらく見惚れてしまった。
他の植物の隙間を縫うようにして、見たことのない真っ白な花が、ひっそりと、しかし背筋をピンと伸ばして咲いていたのだ。
植えた覚えは、もちろんない。昨日まではそこに何もなかったはずだった。
まるで雨粒が地面に落ちた拍子に、そのまま白い花へと姿を変えたかのような、不思議な錯覚さえ覚える。
「これ、何の花?」
気になって調べてみると、その花の名前は玉簾(たますだれ)。
別名「レインリリー(雨のユリ)」という異名があることを知った。
まとまった雨の水分を合図にして、土の中で眠っていた球根が一気に茎を伸ばし、数日のうちに開花するのだという。
なるほど、と胸のつかえが下りると同時に、愛おしさが込み上げてきた。
この子は誰に気付かれるでもなく、周りの大きな植物の陰でじっと息を潜め、恵みの雨が降るその瞬間を待っていたのだろうか。
風に運ばれてきた種なのか、それとも土の底で眠っていた古い球根なのか。
どちらにせよ、私の知らないお庭の歴史が、雨をきっかけにひょっこり顔を出したようだった。
野に咲く花のようなたくましさと、触れれば折れてしまいそうな儚い白さ。
今年の夏は過去にない酷暑で、いくつかの鉢植えの植物が枯れてしまい悲しかったが、出会うはずのないいくつかの野に咲く花?がわたしのところにやってきてくれた。
まさに雨が届けてくれた小さな贈り物。
草陰でじっと恵みの雨を待っていた健気な白さに、雨上がりの庭でしばらく見惚れてしまった。

小さな暮らしの案内人
