黄金色の稲穂への切ない恋文-中秋の名月

今日のお話し
今日は中秋の名月。夜空に輝く満月についてのお話しです。

夕暮れ、ベランダに出てみると秋の風が私の肌を撫でていきました。

あんなに重たかった夏の湿気が去り、優しい涼しさを連れてきてくれたようです。

秋の夜空がこんなに澄んで見えるのは、カラリとした乾いた心地よい空気のおかげでしょう。

そんな特別な夜空に昇る中秋の名月は、優しく、温かい光で私たちを包み込んでくれるように感じます。

しかし、この美しい月は、かつての人々にとって単なる「観賞の夜」だけでなく、もっと泥臭く、もっと切実な、命の境界線でもあったのです。

私たちが飾る、お月見のススキ。

それは、まだ見ぬ黄金色の稲穂への、切ないほどの恋文のようなものでした。

本来は、命の源であるお米の実りを月に捧げ、感謝を伝えたい。

しかし、本格的な収穫はもう少し先になるため、人々は姿がよく似たススキを飾り、未来の豊作を月に祈ったのです。

月の光に揺れるススキの穂は、先人の人たちの目には、きっと美しく実った稲穂そのものに見えていたに違いありません。

またお月見といえば、お団子がかかせません。

幼い頃、私は「月には本当にウサギが住んでいて、この日に餅つきをしている」という話を信じていました。

かつては、中秋の名月の頃、ちょうど里芋の収穫が始まる時期にあたり、「今年も無事に里芋が採れました。ありがとうございます」と満月に初物を捧げて感謝したのが、お月見の本当の始まりと言われています。

このことから、十五夜は別名「芋名月」とも呼ばれています。

現在では中秋の名月と言えばお団子が当たり前だと思っていましたが、長い歴史のなかで里芋から、お米で作るお団子へ姿を変えていったのです。

ひんやりとした秋風の中、ススキの白さに包まれながら、遠くに見える満月に土の実りを感謝する。

中秋の名月は、自然の優しさと、実りを待ち望む人々の健気な祈りが響き合う、特別な夜なのです。

今夜は美しい満月に出会えますように……。

🌿今日のひとこと
中秋の名月には、ただ美しいだけではない、先人の人たちの祈りが込められていたのですね。
今夜は、そんな想いを感じながら過ごしたいと思います。